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カニゼンメッキとは?特徴や分類についてご紹介
2023年02月01日
カニゼンメッキとは何か知っていますか?
メッキを使用する職に就いていればおそらく何度も聞く機会があるでしょう。
今回はカニゼンメッキはどんな物か、カニゼンメッキの特徴や分類などをご紹介します。
メッキに関係する職に就きたい方、カニゼンメッキについて詳しく知りたい方必見です。
株式会社ブラザーでは、自動車部品の表面処理加工(メッキ加工)、半導体製造装置や液晶製造装置の表面処理加工を行なっています。
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目次
カニゼンメッキとは日本カニゼン株式会社の無電解ニッケルメッキ
カニゼンメッキとは、日本カニゼン株式会社が商標登録している、無電解ニッケルメッキになります。
日本国内で最初に広まった無電解ニッケルメッキのため、日本カニゼン株式会社のカニゼンを取り「カニゼンメッキ」と呼んでいます。
無電解ニッケルメッキと呼ぶか、カニゼンメッキと呼ぶかは固有名詞を使うか、総称を使うかの違いであり基本的には同じ物を指すと知っておきましょう。
カニゼンメッキの特徴は電気ではなく化学反応を利用
カニゼンメッキ(無電解ニッケルメッキ)は、電気を使わずにニッケルメッキ処理が可能です。
電気ではなく化学反応(化学的還元作用)を利用してメッキ処理を行うため、メッキの膜厚が均一になります。
膜厚のばらつきがすくないため、寸法の変化が小さく複雑な形であっても高精度な仕上がりになり、精密性が求められるメッキです。
また、電気を使用したメッキ処理が行われる場合、メッキを施す物が導体(電気を通す素材)でなければメッキが施せないといった問題があります。
しかし、電気を使用しないカニゼンメッキであれば、プラスチックやセラミックなどの不導体(電気を通さない素材)であってもメッキ処理が可能です。
不導体の素材にカニゼンメッキ処理を行うと、不導体だった物に通電性を持たせたり、耐久性が向上したりといった付加価値を付与できる場合があります。
カニゼンメッキの5つの特徴
カニゼンメッキには大きく5つの特徴があります。
● 耐久性
● 耐薬品性
● 耐食性または防錆性
● 複雑な形にも対応
● 高い汎用性
それぞれ詳しくご紹介します。
電解ニッケルメッキよりも高い耐久性
カニゼンメッキ(無電解ニッケルメッキ)は、電解ニッケルメッキに比べ高い硬度と耐摩擦性を兼ね揃えているため耐久性が高いです。
耐久性はカニゼンメッキのリン含有率によって変動します。
それだけではなく、カニゼンメッキ処理後に熱処理するとより硬度が高くなるといった特徴があります。
ただしリン含有率によって熱処理する温度や時間によっては、素材の変形やメッキがはがれてしまう可能性もあるので注意してください。
薬品による変化や腐食に耐える耐薬品性
カニゼンメッキは耐薬品性が高く、リンの含有量が高いほどより耐薬品性も高くなります。
カニゼンメッキが対抗能力を持っている薬品は主に以下の通りです。
● 二硫化炭素
● 炭酸ナトリウム
● 水酸化ナトリウム
● ガソリン
● アセチレン
● メチルアルコール
● グリセリン
● ホウ酸
● クロロフォルム
● 硫黄
● 漂白剤 など
ここに挙げた薬品以外にも化学工業などでよく使用される薬剤に対しては対抗能力を持っています。
カニゼンメッキの代表的な特徴である耐食性または防錆性
カニゼンメッキの代表的な特徴は耐食性と防錆性です。
腐食の原因となる物質がメッキ処理を施した素材に到達するのを防ぐ効果がありますが、ここで大切なのはメッキ皮膜の緻密さになります。
カニゼンメッキは皮膜が均一になるので、より緻密な皮膜が生成できるため耐食性や耐錆性の強さにつながっています。
電気を使わないからこそ複雑な形にも対応
電気を流してメッキ処理を行う電解ニッケルメッキの場合は、電気の通りやすい部分と通りにくい部分がどうしても存在します。
特に複雑な形であればあるほど電気が通りにくい場所は存在するため、そういった部分にはメッキ処理ができないかもしれません。
しかし、電気を使用しないカニゼンメッキであれば複雑な形であっても均一なメッキ処理が可能です。
カニゼンメッキが普及した要因の一つである汎用性の高さ
カニゼンメッキが日本全国に普及した要因の一つに汎用性の高さがあります。
一つ目ははんだ付け性が高い点で、電気慣例部品には欠かせない物であり、製品の機能や安定性を保持するために重要な物です。
二つ目はメッキ処理ができる対応素材の種類が多い点です。
先ほども少し触れましたが、カニゼンメッキは電気を使用しないため、電気を通さない素材であってもメッキ処理ができます。
カニゼンメッキに含まれるリン含有量別3つの分類
カニゼンメッキと一言でいっても、カニゼンメッキに含まれるリンの含有量によって主に3つに分類されています。
● 低リンタイプ
● 中リンタイプ
● 高リンタイプ
リンの含有量によって同じカニゼンメッキであっても、性質の異なるメッキ作用が得られます。
どんなところにカニゼンメッキを施すのかによって使い分けが重要です。
リン含有率が4%以下の低リンタイプ
リン含有率が4%以下の低リンタイプの特徴としては主に以下の4つがあります。
● 皮膜が硬い
● 薬品の中でも耐アルカリ性に特に優れている
● ガラスなどの特殊素材への密着性が高い
● 還元効率が高い
低リンタイプのデメリットとしては、メッキ浴の寿命が短く濁りやすい点やコストが高い点などがあります。
電子部品やバルブなどに使用されていますが、メッキ浴の管理が難しいため幅広く利用されているわけではありません。
リン含有率が9%前後の中リンタイプ
リン含有率が9%前後の中リンタイプは一般的に使用されている物であり、カニゼンメッキ(無電解ニッケルメッキ)は中リンタイプを指す場合が多いです。
中リンタイプの特徴は主に以下の3つがあります。
● 高い耐食性と防食性
● メッキ浴の使いやすさ
● 一般素材に対するメッキの付きやすさ
全体的なバランスが取れているため、汎用性も高く幅広い用途で使用されています。
ただし、メッキ浴を使用しているとリン含有率が高くなっていきます。
使い続けていると、いつの間にか高リンタイプのカニゼンメッキになっている可能性があるので注意してください。
リン含有率が12%以上の高リンタイプ
リン含有率が12%以上の高リンタイプは最近、ハードディスクの下地用メッキとして急速に使用量が増えました。
高リンタイプの特徴は主に以下の3つがあります。
● 高温で熱処理をしても非磁性を維持
● 薬品の中でも耐酸性に特に優れている
● メッキ浴が安定で濁りにくい
しかし、メッキ浴の寿命も低リンタイプよりは長く、中リンタイプよりは短くなっています。
また、光沢もあまりありません。
カニゼンメッキとは電気を使用しないニッケルメッキ
今回はカニゼンメッキとどんな物か、カニゼンメッキの特徴や分類などをご紹介しました。
カニゼンメッキは無電解ニッケルメッキと呼ばれる場合もあり、基本的には同じ物になります。
耐久性や耐薬品性などに優れており電気を使わないからこそ、電気の通らない素材へのメッキ処理や複雑な形であっても均一にメッキ処理を行えます。
カニゼンメッキにはリンの含有量によって大きく3つの種類があり、性質が少し変わる場合もあるので、メッキ処理を行う物によって使い分けるようにしましょう。
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