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【初心者でも分かる】硬質クロムメッキの特徴や強みは?基礎から解説
2023年02月06日
硬質クロムメッキは、産業界で広く使用され、優れた表面処理技術として知られています。
耐摩耗性、耐腐食性や耐熱性も備えた技術ですが、初めてこの技術を聞いた方には、特徴や強みがよくわからない方も多いでしょう。
この記事では、硬質クロムメッキの基礎知識についてわかりやすく解説します。
概要や使われる素材が知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
株式会社ブラザーでは、自動車部品の表面処理加工(メッキ加工)、半導体製造装置や液晶製造装置の表面処理加工を行なっています。
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目次
硬質クロムメッキの特徴5つを解説
金属の表面に電気的にメッキする技術の一つで、ハードクロムメッキ、工業用クロムメッキとも呼ばれます。
主な特徴は次の5つです。
1. 耐摩耗性の高さ
2. 耐腐食性の高さ
3. 耐熱性の高さ
4. 見た目の美しさ
5. 水素脆性の起こりやすさ
自動車部品、航空宇宙産業、医療機器など、品質の高い表面処理が必要となるさまざまな産業で使用されています。
特徴を詳しく見ていきましょう。
1.耐摩耗性の高さ
硬質クロムメッキが施された表面は、非常に硬く摩擦や摩耗に耐性があり、耐摩耗性が求められる部品や工具に多く使用されます。
電気メッキの中では、最も硬い被膜であるといわれています。
メッキ浴の温度や陰極電流密度によって硬度が750~1000Hvと変化し、膜厚が25μm以上で800~1000Hvです。
耐摩耗性が高い硬質クロムメッキ同士であれば、摩耗が少なくなると考えられるかもしれませんが、実際はかじり現象が起こり硬度の低い方の表面が削られ、急速に摩耗が進むため注意してください。
2.耐腐食性の高さ
メッキ加工によって表面が30μm~50μm厚以上になると、耐腐食性が一気に向上します。
しかし、一般的な環境下では安定するものの、以下のような化学薬品は浸食を起こすため、注意しましょう。
● 塩酸
● フッ酸
● リン酸
● シュウ酸
● 希硫酸
● クエン酸
● 乳酸
● 塩化カルシウム
クロムメッキの下地に施す処理によって、耐食性が強化されます。
3.耐熱性の高さ
硬質クロムメッキによって形成された表面は、高温に対しても変質しにくい特徴があります。
一般のメッキは摩擦や加熱によって剥離するケースが少なくありません。
そのため、硬質クロムメッキは高温下で使用する部品や機械の表面を保護する目的でも活用されます。
硬度が下がる温度については、使用環境やメッキ層の厚さに影響を受けるため、一概にはいえません。
一般的には、400℃までの加熱で徐々に硬度が低下し、800℃で400Hvまで低下するといわれています。
4.見た目の美しさ
硬質クロムメッキによって形成された表面は、光沢のある美しさが特徴です。
光沢のある美しさから、自動車やオートバイなどの外装部品、装飾部品にも使われます。
離型性や摺動性の向上には、メッキ加工前後のバフ研磨が欠かせません。
素地表面の粗さは、メッキの仕上がりや耐食性にも大きく影響します。
また、仕上げに使用する研磨剤の粒度を細かくすることによって、摩擦係数が低下し摺動性を向上させます。
光沢剤を含まないのに光沢を出せる唯一のメッキです。
5.水素脆性の起こりやすさ
硬質クロムメッキは電流効率が悪いため、メッキ加工を施す際、水素が大量に発生します。
大量に発生した水素は、鉄素地に侵入して金属素材の靭性(じんせい)を低下させ、もろくさせます。
水素脆弱性への対策としては、加熱によって吸収された水素を追い出す方法などが考えられるでしょう。
メッキ層の厚みや使用環境の制御も必要です。
硬質クロムメッキ加工のプロセス
硬質クロムメッキの基本的な加工プロセスは、以下の流れです。
1. 脱脂
2. 酸活性(酸浸漬)
3. 陽極処理(エッチング)
4. 硬質クロムメッキ
5. 乾燥・研磨・塗装
硬質クロムメッキには主に3種類のメッキ浴があり、それぞれ特徴や用途が異なります。
メッキ浴の種類 | 特徴・用途 |
サージェント浴 | ・最もよく使われる
・管理がしやすい ・幅広い用途で使われる |
フッ化浴(混合触媒浴) | ・つきまわり性やメッキ速度を改善されたメッキ浴
・サージェント浴より生産性で優れる ・重ねづけに向いている |
HEEF浴(高効率浴) | ・薬品メーカーの商標メッキ浴
・電流効率が高い ・量産・自動化に適している ・高硬度で光沢がある |
それぞれの特徴を理解して、用途に合ったメッキ浴を行いましょう。
硬質クロムメッキの強みと弱み
硬質クロムメッキには強みと弱みがあるため、どちらも把握したうえで利用を検討しましょう。
強み|使用場面の多さ
耐摩耗性、耐熱性の高さといった特徴から、利用される場面の多さは硬質クロムメッキの強みといえるでしょう。
また、自由な厚さで、しかも部分的なメッキ加工ができるため、部品の補修や磨り減った部品の再生もできます。
機械部品にはなくてはならない加工、ともいわれるほどです。
さらには、耐腐食性の高さから化学・食品工業分野でも活躍しています。
弱み|難易度が高い処理
メッキの品質を均一にするには、電圧や温度管理、治具製作・考察などが必要になり、技術的な難しさが弱みといえます。
メッキ浴に使う液体の管理も、簡単な作業ではありません。
また、価格面でほかの表面処理に比べて割高になりやすいのは、処理の難易度の高さに加えて電流効率の悪さも影響しています。
硬質クロムメッキに精通した経験豊富な職人がいるかどうかが、差別化の要因の一つとなるでしょう。
まとめ
硬質クロムメッキは、部品や工具の耐摩耗性、耐腐食性、耐熱性を上げるために広く使用されている表面加工技術です。
工業製品に使用されるだけでなく、日本のものづくりの発展にも、大きく貢献する技術であると期待されています。
部品や工具の使用寿命を延ばし、品質を向上させるための重要な技術として、今後もさまざまな分野から注目されるでしょう。
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